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第二回 機能美を優先したデザイン

 Yosemiteを搭載したMacintoshが歓迎されない一つに、あまりに斬新な外観がある。いままでのベージュの筐体、誰の目にもいかにも「コンピュータでござい」といわんばかりのデザインにおさらばし、まったく度肝を抜くようなデザインを果たした。
「ポリタンク」とか「ポリバケツ」
と揶揄されることもある。たしかにエンボスがかかった半透明のアイスホワイト色を見ていると、そんなふうに見えないことはない。
 しかしそれはやはり先入観ではないだろうか。デザイン的に受け入れられない気持があるから、そう思うだけである。モニタの横におき、使ってみると、そのような印象は一切ない。特にサイドから見たときののシンメトリックなデザインは実に美しい。
 New G3を語るときに、表層的なデザインイメージだけで判断していいのだろうか。所詮人間の目は慣れるものであり、時間がたつと、今のデザインはきっと気にならなくなるに違いない。私も実はフロントパネルだけがクリアな素材で縦にストライプが入っているのは、どうもしっくり来ないのだが、それ以外のデザインは「よく考えられているな」と思うことしきりである。
 iMacは、コンシューマというよりコンピュータの初心者でも、簡単にしかも面倒な配線もしないでもすぐに使えるという明確なコンセプトから、プロダクトデザインが導きだされたのは承知のことだろう。同じようにNew G3もプロシューマ向けにプロがMacintoshを使いこなすためにデザインを最優先されて設計されている。そういうことは所詮自分で使って見ないと分からないことが多いのだ。
 まず四隅にある把手だが、これは実に機能的である。四隅に把手があることでフロント、バック、トップ、ボトムに強制的に空間が作られる。今までのデスクトップ型にしても、タワー型にしてもサイドとバックに放熱用のスリットがあるが、実際にはMacintoshの左右にはさまざまなものが置かれており、CPUの放熱が設計どおりに行なわれる可能性はあまり多くない。たいていのユーザーは狭い空間の中に、Macintoshだけでなく周辺機器も詰め込んでおいていることが多く、New G3が四隅の把手によって確実に空気の通り道を確保できるのとは大違いである。また下部にある二つの把手は、筐体を浮かすことで下置きしたときに、ほこりが進入することを防ぐに違いない。
 上の二つの把手は、背面のポートにアクセスするときに威力を発揮する。上部の二つの把手を持つと軽々と筐体を持ち上げて、New G3を前に引っ張りだすことができる。もちろん頻繁に背面の各種のポートにアクセスすることはあるわけではない。しかし、プロシューマたるもの、そういう必要性は決して低くない。新たにケーブルを差したり、ケーブルを差し替えたいと思ったとき(実はそういうことをするのが楽しいだけだったりするのだが)、いとも簡単に差し替えることができるわけで、たいへん便利である。
 もっとも機能的なのは、側面のドアであろう。あればっかりは感動的である。ワンタッチでCPUもメモリも拡張カードも一望のもとに鳥瞰し、アクセスできるのだ。「オープンドア哲学」を標榜するのも頷ける。Macintoshも使いも慣れてくると、メモリやカード類の拡張は当たり前のことになるが、まるで電子レンジでチンするがごとく、Macintoshのパフォーマンスをいとも簡単に向上できる。
 今までのMacintoshでも、昔から比べれば内部へのアクセスは簡単になってきたが、実際には必ずしもそうではない。何故なら、たいていのデスクトップタイプのMacintoshの上にはMOドライブや外付けハードディスクなどが積み上げられていて、まずそれらをどけないことには筐体のカバーを空けることはできないからである。タワー型であっても、実際にはケーブル類を全て外して、広い作業スペースを確保してからの増設になる。そのためカバーを空けるのは簡単になっても、それまでの手続きが面倒である。
 しかしYosemiteでは、筐体をちょいと前に引っ張りだして、開閉用のレバーに指をかけて軽く引っ張るだけでよい。しかもケーブル類は一切外す必要はないし、起動したままでもロジックボードにアクセス可能だ。
 もちろん、背面のケーブルをいじったり、ロジックボードに手を入れるようなことは特別な事情がないかぎり、年に何回かあるだけかも知れない。しかしこれだけ簡単にアクセスできるとなると、その必要があったとき、なんのストレスもなくMacintoshを拡張することができるのだ。というより、ここまで簡単であれば、どんどん拡張して使いこなしていこうと思ってしまうのである。
 表層的なデザインはともかく、機能性と言う意味では、New G3は機能美がいかんなく果たされているのではないのではないかと思う。
「DTP-Sウィークリーマガジン 第23号(1999/05/20)」掲載



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