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第三回 驚異の100MHzのシステムバスクロック

 Yosemiteのスピードを語るうえでもっと驚異的なのは、100MHzのシステムバスクロックだろう。まさかこんな早く100MHzを達成するとは思わなかった。初代のPower Macintosh G3が83MHzだったから、十分予想できたとはいえ、足踏みすることなく一気に100MHzの大台にのった。
 Power Macintosh 8100がリリースされたときに、CPUクロックは80MHzを達成した。そのときのシステムクロックはその半分の40MHzで、水晶発振器でクロックを倍にしてCPUの速度を高速にした。それまではCPUの速度とシステムバスの速度は同じで、Power Macintosh以来、CPUの増幅は当たり前になった。当時その水晶発振器をクロックダブラーと呼んでいたが、いまは別の呼び方をするようである。
 その後この発振器の倍率をあげてCPUのパフォーマンスを上げることが普通になり、CPUクロックはどんどんと高速になったが、システムバスのクロックはほとんど上がらなかった。私が使っているPower Macintosh 7600/120も、システムバスクロックが40MHzを三倍にしてCPUを120MHzにしているか、システムクロックが30MHzでそれを四倍にしているかのどちらかである(40MHzが正解)。
 理屈の上からいうと、当然CPUクロックが高いほうがいいのである。CPUでは少なくともOSやアプリケーションの演算命令を行ないながら、モニタの描画命令を行なっていて、複数のデバイスとデータのやり取りを行なうわけで、CPUの速度がシステムバスクロックの数倍であるのは、それほど不自然なことではない。
 ただこのところアップルはシステムバスの高速化をおざなりにし、CPUクロックを上げることだけで、パフォーマンスの向上を図ってきたが、実はそれがもう限界に来ていたのである。
 本当の意味での処理パフォーマンスを向上するためには、CPUクロックではなくシステムバスクロックを向上しなければならない。システムバスクロックを50MHzのまま、CPUクロックを400とか500MHzにしても、実際にはそれほどパフォーマンスが上がるわけではなく、システムの処理が遅いとCPUが演算待ちになって、クロックが上がったほど高速にならないのである。
 つまりロジックボード全体でパフォーマンスを上げるためには、システムバスクロックとCPUクロック、そしてその間にあるキャッシュ(New G3ではバックサイドキャッシュ)のバランスなのである。これらが調和されていてこそ、トータルのパフォーマンスは約束されるのだ(もちろん外部バスやビデオ回路のパフォーマンスとの調和も必要)。
 しかし、しかしである。CPUやキャッシュメモリは、設計がしっかりしていて製造技術が確立できれば、処理パフォーマンスを進化させることはそれほど難しくない。いやいや難しくないわけではないが、ある意味では先が読みやすいものであることは間違いない。
 ところが、システムバスクロックを上げるには、システムバスにぶら下がる全てのデバイスの信頼性を上げなければならないのだ。全てのパーツで100MHzで動作しても問題ない設計と製造技術が問われるだけでなく、それを組み合わせたときの製造管理の技術まで高度なものにしなければならない。かつてアップルの製品で初期不良が多かったのは、こうした製造管理の技術が高くなかったためで、それが故にシステムバスクロックは高くならなかったところが多分にある。
 それがここに来て、着実にシステムバスクロックを大幅にアップさせてきた。これは、コンピュータ業界全体の製造技術が発展したことと、MacintoshとPC互換機の技術的な壁が無くなりつつあることもあるにしても、アップルの製造技術が確かなものになったことの証なのだ。
 システムバスクロックが大幅に向上したということは大いに驚きであるが、それよりもロジックボードの設計にあたって、全体のパフォーマンスのバランスをもっともよく考慮しているところがもっとも「驚嘆」すべき点かも知れない。
 いままでハードウェアの点で取り残されつつあった感のあるアップルだったが、100MHzのシステムバスクロックを見るにつけ、ハードウェアの点でも先頭を競う位置に付けつつある。このとこはハードウェアのみならず、ソフトウェアも開発するハイブリッドな企業として、この二つを止揚しながら先進的な提案が可能になったと言うことだろう。100MHzのシステムバスクロックを見るだけでも、今後の急展開が大いに予想される。
「DTP-Sウィークリーマガジン 第24号(1999/06/03)」掲載



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