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15.そしてレイアウトは始まった


 4月の8日になって寺田さんから「来週後半にテキストデータおよびレイアウト素材お送りします」と、やっと具体的な日程が提示された。
 第1章のチェックバックが送られてきたのは、予定から少し遅れた4月24日であった。第1章は一部が12月の末にチェックバックされていた。それは、チェックであると同時に、体裁の指示でもあったが、これで第1章のテキストデータのチェックは全て揃い、直しは可能になった。
 ところがもう一つの「レイアウト素材」は送られて来ていなかったのである。まあすぐに後送されるであろうし、他の章のチェックバックも追っかけて来るだろうと楽観していた。これで作業が進むと思うと、正直いってホッとした。この調子で行けば、ゴールデン・ウィークが山場だな、ゴールデン・ウィークの休みにどれだけ作業がこなせるのかで、進行具合が左右されるだろうと思うと、力が湧いてきた。
 しかし第1章のテキストのチェックは終わったが、「レイアウト素材」は送られて来ないまま、とうとうゴールデン・ウィークに突入してしまった。テキストのチェックは終わっても、まだまだ加筆したいところがあって、その作業も必要なのだが、できれば、レイアウト作業をしながら行ないたいと思っていた。2ページで構成されるトピックは、原則的に見開きにしたいと思うので、そのあたりを配慮しながら、書き足そうと思っていたのである。
 「レイアウト素材」がないとこれ以上作業はできない。もし順調に作業が終われば、ひょっとすると6月には出版できるのではないかという私の淡い期待は、打ち砕かれてしまった。
 レイアウトをどうするのかで、見た目の印象が決まってしまうので、そう簡単には決めれないのかも知れなかった。レイアウトが決まってしまったら、あとで変更することは実質的には不可能である。もしレイアウトを行なうデザイナーとDTPのオペレートワークを行なう人が同じであれば、もしレイアウトしながら気になる部分があれば、ベースのデザインにも手を入れることは可能であろう。
 結局待ちに待った「レイアウト素材」が届いたのは、5月16日だった。やっと来た。待ちに待ったものがやっと来たのである。すぐさま、QuarkXPressでベースデザインのマスターページを作成し、順次レイアウト作業を行なった。引き続き第2章、第3章の原稿のチェックも送られてきた。
 原稿のチェックは編集者である寺田さんが行なっている。出版社によっては、こうした専門的な原稿のチェックを別のライターなりフリーの編集者に依頼することもあるが、本書の場合は、編集担当者である寺田さんが直接行なうわけである。一番最初に原稿を私が書いて、それに寺田さんがチェックを行ない、それをまた私がDTPするのである。マスターページのデザインを行なったデザイナーを別にすれば、「標準DTP出力講座」はたったふたりでキャッチボールしながら作った珍しい本である。
 こういう本は何人もの人の手を経て、分業化されて作られるのが普通である。これはDTPの時代になってもあまり変わっていないようだ。版下がデータに変わっても、工程は同じだったりするのである。
 本を出版するという事業で、もっとも大きなコストは人件費であって、コストを下げるには出版にかかわる人の数を少なくするしかない。もちろん何十万部とか何百万部とか売れるようなベストセラーは別だ。最初から売れることが読めるのであれば、それに見合った制作費をかけることができる。しかしベストセラーになるものはごく一部であり、あらかじめベストセラーになるとわかっているものは少ない。だから一般の書籍は、ミニマムの発行部数でコストと販売価格を天秤にかけるしかない。
 販売価格を決めるのは難しい。基本的にはその本に値頃感があるかどうかによって、左右されると思う。出版物のジャンルによって、価格帯は違うから、この価格だったら売れるというものはないが、この内容(ページ数)だったらこのくらいという世間相場というものがあるから、それから外れないようにするしかない。さらに言えば、その世間相場より少し安いほうがいい。内容が良ければ高い値段でも売れるというのは、一面真理ではあるが、高くなればなるほどその本を手に取る人は少なくなる。たとえマーケットが小さくても、出版物はできるだけ多くの人に読まれるほうが価値がある。より多くの人に読まれるためには、販売価格を下げる努力を怠るわけにはいかない。DTPも裾野が拡がっているので、価格を下げることで、予想以上に売れる可能性だってあるのである。
 そうすると、販売価格を下げるにはコストを下げるしかないのだが、そのコストを下げるためには、ただDTPするだけでは不十分で、工程を見直し、本の制作にかかわる人を減らさなければならないだろう。DTPのメリットを享受するためには、ワークフローの見直しは欠かせないテーマである。
 多分DTP関係の書籍を作っているところは、そういうやり方に近い方法でおこなっているのであろうが、これからはDTPやコンピュータ関係の書籍でなくとも、ワークフローの見直しが行なわれるようになるのではないだろうか。
「標準DTP出力講座」は寺田さんと私のふたりで作業を進めるので、決めるべきことを決めてしまえばあとは早い。打ち合わせなどの時間はほとんど必要ないし、問い合わせはたいていメールで十分なのである。



このコンテンツは1997年12月2日に書かれたものです。

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