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第八回 100Base-TXの実力

 YosemiteになってEthernetが初めて100Baseになった。Macintoshのネットワークは栄光のローカルトークを経て、10Base-2から10Base-Tとなり、iMac以後やっと100Baseを達成した。
 100Baseといってもいくつか種類があり、大きく分けるとHPが音頭をとって開発した100VGA-AnyLanと100Base-Tがある。100VGA-AnyLanは10Baseとの下位互換性を無視し、パフォーマンスを追及した規格だったが、登場時に高コストであったためほとんど普及しなかった。
 結果的には、10Baseと共存可能な100Base-Tが次世代がネットワークの仕様となった。100Base-Tにはケーブルなどの仕様の違いによって100Base-T2、T4、FX等があるが、Yosemiteに搭載されているのは最初に開発された100Base-TXである。
 さてはたして100Base-TXになると、ネットワークのパフォーマンスは向上するのだろうか。
 Yosemiteの100Base-TXの能力を完全に引き出すには幾つかの条件がある。まずは全二重通信で送受信すること、である。
 いままでのEthernetは半二重という方式で通信を行ってきた。この方法は確実に手続きを踏んで行うので、安心かつ安全であるが、その分だけパフォーマンスは低下する。もともとEthernetではネットワーク上では同時に複数の送受信を行えない。したがってあるノードからパケットが送られると、他のノードはパケットの送受信が完了するまで待つことになる。しかも半二重の場合は、送信したら受信側が受けとったという確認のパケットを返信して、初めてひとつのパケットの送信が完了するのだ。
 また複数のノードから同時にパケットが送出されると、コリジョンといってパケットの衝突が起こり、両方のパケットは破棄されてしまう。ネットワークでの通信頻度が高くなると、間違いなくコリジョンは増加する。したがってEthernetで多くのコンピュータを繋いだ環境でネットワークのパフォーマンスが著しく低下してしまうのは、このコリジョンの頻度が高くなるからなのである。
 こういったコリジョンによるパフォーマンスの低下を避けるために開発された技術が全二重という方式である。基本的には全二重はコリジョンを発生させないようにする。簡単に言うと、ハブを賢くするのである。
 以前のハブはシェアードハブと呼ばれるもので、いわば単なる信号の増幅器でしかない。送信された信号はハブで増幅されてネットワークに繋がった全てのノードに送られる。パケットには送信先アドレスが書かれているので、それを送信先が読んでパケットを受け取るのである。つまりハブは通過点にしかすぎない(だから安い)。
 いま低価格で販売されているものはたいていがリピータハブと呼ばれているが、これはシェアードハブにバッファを積んだだけで、基本的な構造はほとんど変わらない。
 そしてこのハブを賢くしたしたものが、スイッチングハブと呼ばれるハブである。スイッチングハブは、ハブ内のコントローラがパケットの送信先アドレスを読み、パケットを送信先だけに転送する。しかもハブ内の回路は各々のポートにバイパスできるようになっているので、送受信先が重ならないかぎり、複数の通信が可能になる。スイッチングハブの性能は、コントローラの性能と、バックプレーンと呼ばれるハブ全体の通信能力のキャパシティによって決められる。
 そして全二重を使うためには、このスイッチングハブが不可欠になる。全二重でスイッチングハブを使ってネットワークを組めば、単純に言って半二重の倍のパフォーマンスが得られる。
 これは全二重では、スイッチングハブが受信ノードの代わりにパケットをどんどんと受け取るからである。しかもパケットを受け取って、律儀に受信確認をしてから次のパケットを受けるということはしない。全二重では送信と受信を同時に行えるので、パケットを連続して送り続けることができるので。実質的な送信パフォーマンスは半二重の倍といわれる。したがって全二重では、そのパフォーマンスを確実に生かせば、100Mbpsではなく200Mbpsの通信能力がある。つまり理論値では1秒間で25MBのデータを送ることが可能なのである。
 とはいえYosemite同士を全二重でネットワークしても、せいぜい1〜2MB程度のパフォーマンスしか得られない。高速の通信を行うためには、まだ別の要因があるのである。
「DTP-Sウィークリーマガジン 第27号(1999/07/15)」掲載



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